2026年9月30日

疑問|がんと診断されたら、心臓や血管の病気も確認した方がよい?
「がんの治療を始めることになりました。心臓の病気や血圧、糖尿病についても主治医に伝えた方がよいのでしょうか?」
がんの診療では、がんそのものだけでなく、治療前からある心不全、心房細動、心筋梗塞、脳卒中などの病気を把握することも大切です。
今回は、心臓・血管の病気の分野で国際的に評価の高い医学誌「European Heart Journal(EHJ)」に掲載された、英国の大規模研究をご紹介します。
結論|がんの診断時に、心臓・脳・血管の病気がある方は少なくありません
英国の記録では、2016〜2020年にがんと診断された方の39.2%に、診断前から心臓・脳・血管の病気が記録されていました。年齢構成の違いを調整した割合で、2001〜2005年の31.4%より高くなっていました。
ただし、これはがんが心臓病を起こした、あるいは全員に心臓の詳しい検査が必要という結果ではありません。もともとの病気や症状、予定される治療に応じた確認が重要です。
結果|英国でがんと診断された773,590人を調べた研究
英国イングランドで、2001〜2020年に乳がん、前立腺がん、肺がん、大腸がん、血液のがんと初めて診断された18歳以上の773,590人を調べた研究です。平均年齢は70.1歳でした。
研究者は、かかりつけ医、入院、がん登録の記録をつなぎ、がんと診断される前に、心筋梗塞、心房細動、脳卒中・一過性脳虚血発作、心不全、足などの動脈の病気、心臓弁膜症のいずれかが記録されていたかを調べました。
| がん診断前からあった病気 | 2001〜2005年 | 2016〜2020年 |
|---|---|---|
| 心臓・脳・血管の病気のいずれか 年齢調整後 | 31.4% | 39.2% |
| 心不全 単純割合 | 6.9% | 13.4% |
| 脳卒中・一過性脳虚血発作 単純割合 | 6.0% | 8.1% |
| 糖尿病 単純割合 | 9.7% | 17.8% |
※「年齢調整後」は、時期による年齢構成の違いをそろえて比べた割合です。心不全、脳卒中・一過性脳虚血発作、糖尿病は、各期間の参加者に占める単純な割合です。糖尿病は心臓・脳・血管の病気をまとめた項目には含まれません。
年齢、性別、がんの種類を考慮した解析でも、心臓・脳・血管の病気が記録される割合は年とともに増えていました。個別にみても、心不全、心房細動、脳卒中、心筋梗塞はいずれも統計学的に明らかな増加傾向を示しました。特に心不全と心臓弁膜症の増加が大きい結果でした。
この研究は、過去の診療記録を用いて時期ごとの割合を比べた観察研究です。診断方法や記録の仕方の変化が影響した可能性があり、英国の結果をそのまま日本に当てはめることはできません。また、がんのない方との比較がないため、増加ががん患者さんに特有かどうかも判断できません。
当院からのメッセージ|病歴とお薬を、がんの主治医にも伝えましょう
がんの診断や治療を受ける際は、心不全、心房細動、心筋梗塞、脳卒中、高血圧、糖尿病などの病歴と、服用中のお薬を主治医へ伝えることが大切です。お薬手帳や健診結果が役立ちます。
息切れ、胸の痛み、動悸、足のむくみなどがある場合は、我慢せずに相談してください。必要な血液検査、心電図、心エコーなどは、症状、これまでの病気、予定される治療を踏まえて判断します。
足立区・谷在家の「心臓・脳・血管のしばはし内科」では、循環器の状態や生活習慣病についてご相談いただけます。詳しくは、心不全・心臓弁膜症の診療、心房細動・不整脈の診療をご覧ください。
参考文献
Alshahrani AA, Kontopantelis E, Morgan C, et al. Cardiovascular disease burden at cancer diagnosis: temporal trends in a national study from England. European Heart Journal. 2026年8月31日公開.
