2026年10月01日

疑問|血圧の薬を飲み始めてから、咳が続いています
「風邪ではなさそうなのに、空咳が続きます。血圧のお薬と関係があるのでしょうか?」
血圧を下げる薬のうち、「ACE阻害薬」と呼ばれる種類では、痰を伴わない咳が出ることがあります。同じ薬でも、症状が出る方と出ない方がいます。
今回は、医学誌「European Heart Journal(EHJ)」に掲載された、血圧の薬の変更や咳と、遺伝的な体質の関係を調べた研究をご紹介します。
結論|薬の変更や咳には、遺伝的な違いも関係していました
一部の血圧の薬では、別の薬への変更や咳の出やすさと、遺伝情報との関連がみられました。ただし、この研究で使った遺伝情報だけで、一人ひとりに咳が出るかを正確に予測することは困難でした。
結果|40万人を超える方の薬の記録と遺伝情報を解析
フィンランド、英国、エストニアの40万人を超える血圧の薬の使用者のデータを用いた観察研究です。薬を無作為に割り当てた試験ではなく、処方・購入記録から、治療開始後の早い時期に薬を継続・変更・中断したかを調べました。
まずフィンランドの256,561人で解析し、薬の変更に関連する遺伝情報を探しました。ACE阻害薬と一部のカルシウム拮抗薬で、合わせて14か所の遺伝的な領域に統計学的に明らかな関連が見つかりました。
さらに、複数の遺伝情報を組み合わせた「薬を変更しやすい傾向を表す点数」を作り、エストニアの参加者で確かめました。次の表は、点数が高い上位10%の方と、中間の方(40〜60%)を比べた結果です。
| 調べたこと | 関連の強さ オッズ比 | 推定の幅 95%信頼区間 |
|---|---|---|
| ACE阻害薬から 別の薬への変更 | 1.27 | 1.15〜1.40 |
| ACE阻害薬による咳 本人の申告 | 2.06 | 1.05〜4.03 |
※オッズ比は、出来事があった方と、なかった方の比率をグループ間で比べる指標です。1より大きいほど、点数が高い方でその出来事が多い傾向を示します。「咳が出る確率が2.06倍」という意味ではありません。
いずれも通常の統計学的な基準では関連がみられました。ただし、この追加解析は探索的なもので、咳を申告した方は105人と少なく、推定の幅も大きい結果でした。遺伝情報による個人の予測精度は低く、すぐに遺伝子検査で薬を選べると示した研究ではありません。
薬を変更した理由は一人ひとり確認できておらず、すべてが副作用による変更とは限りません。また、欧州の方を中心とした結果のため、日本人にも同じように当てはまるかは検証が必要です。
当院からのメッセージ|続く咳は、お薬手帳を持ってご相談ください
薬を飲み始めてから咳が続くときは、自己判断で中止せず、処方した医師にご相談ください。症状の出始めた時期、お薬の種類、ほかの原因の可能性を確認し、必要に応じて薬の変更を検討します。
足立区・谷在家の「心臓・脳・血管のしばはし内科」では、血圧の下がり方と体調の両方を確認し、続けやすい治療を一緒に考えます。お薬手帳と家庭で測った血圧の記録をお持ちください。診察や検査は、症状とこれまでの病歴に応じて判断します。
詳しくは、高血圧の診療をご覧ください。
参考文献
Vaura F, Krebs K, Kiiskinen T, et al. Side effects in hypertension treatment: a pharmacogenomic analysis. European Heart Journal. 2026年8月3日公開.
