2026年9月29日

疑問|心房粗動でも脳梗塞に注意が必要?
「心電図で心房粗動と言われました。心房細動とは違うので、脳梗塞の心配は少ないのでしょうか?」
心房細動は心臓の上側の部屋(心房)が細かく不規則に震える不整脈、心房粗動は心房で速い電気信号が規則的に回り続ける不整脈です。仕組みは異なりますが、どちらも心房内に血のかたまりができ、脳梗塞につながる可能性があります。
今回は、循環器分野で国際的に評価の高い医学誌「European Heart Journal(EHJ)」に掲載されたFinACAF研究をご紹介します。
結論|心房粗動だけの方は脳梗塞が少なかったものの、リスクはゼロではありません
今回の研究では、心電図で心房粗動だけが確認された方は、心房細動だけの方と比べ、脳梗塞の発生率が低くなっていました。
ただし、心房粗動の方にも脳梗塞は起きています。さらに、この研究は治療効果を比べた試験ではないため、結果だけを理由に抗凝固薬(血を固まりにくくする薬)を中止できるとはいえません。
結果|心房細動・心房粗動のある40,986人を調べた研究
フィンランドの全国医療登録とデジタル心電図を組み合わせた観察研究です。2007〜2018年に新たに心房細動または心房粗動と診断され、心電図で不整脈を確認できた40,986人を、心房細動だけ、心房粗動だけ、両方が確認された方の3群に分けました。
追跡期間は平均1.2年で、全体の77.6%が追跡中に抗凝固薬を開始しました。年齢、性別、高血圧、糖尿病、過去の脳梗塞、抗凝固薬の使用などの違いを考慮して、脳梗塞の発生率を比較しました。
| 心電図で確認された不整脈 | 参加者 | 脳梗塞 | 発生率※ |
|---|---|---|---|
| 心房細動だけ | 30,261人 | 2,303人 | 1.9件 /100人・年 |
| 心房粗動だけ | 2,409人 | 88人 | 1.1件 /100人・年 |
| 心房細動と心房粗動の両方 | 8,316人 | 774人 | 2.1件 /100人・年 |
※100人を1年間追跡した場合に相当する発生件数です。一人ひとりが毎年この割合で発症するという意味ではありません。
年齢や持病、抗凝固薬の使用などを考慮した解析では、心房粗動だけの方の脳梗塞発生率は、心房細動だけの方より40%低い結果でした(調整後発生率比0.60、95%信頼区間0.49〜0.74)。一方、両方が確認された方では、心房細動だけの方より11%高い結果でした(調整後発生率比1.11、95%信頼区間1.02〜1.20)。
抗凝固薬を使用していない期間かつカテーテル治療前に限った解析でも、心房粗動だけの方の発生率は低く、同じ傾向がみられました。
この研究は診療記録を用いた観察研究で、心房粗動そのものが脳梗塞を少なくしたと証明するものではありません。また、通常の心電図で「心房粗動だけ」と分類された方にも、記録されていない心房細動があった可能性があります。
当院からのメッセージ|抗凝固薬は自己判断で中止しないでください
心房粗動は心房細動より脳梗塞の発生率が低い可能性がありますが、「安全な不整脈」という意味ではありません。心房細動と心房粗動の両方が起こる方もいます。
抗凝固薬が必要かどうかは、不整脈の種類だけでなく、年齢、高血圧、糖尿病、心不全、過去の脳梗塞などを合わせて判断します。薬を服用中の方は、今回の結果を理由に自己判断で減量・中止しないでください。
足立区・谷在家の「心臓・脳・血管のしばはし内科」では、動悸や脈の乱れ、健診で指摘された心電図異常について、心電図や長時間心電図などの必要性を判断します。詳しくは不整脈・心房細動の診療をご覧ください。
参考文献
Fesseha HE, Aro AL, Teppo K, et al. Ischaemic stroke in atrial flutter vs fibrillation: a Finnish nationwide study. Eur Heart J. Published online September 3, 2026.
