2026年9月25日

疑問|夜の明かりは心臓と関係する?
「寝るときに明るくして寝てしまいます。睡眠だけでなく、心臓にも関係があるのでしょうか?」
今回ご紹介するのは、循環器領域の医学誌「European Heart Journal(EHJ)」に2026年9月9日付で掲載された研究です。
結論
夜間に光を浴びる時間が長い人では、心臓の筋肉の厚さなどに違いがあり、心不全などの発症リスクも高いという関連が認められました。ただし、照明を暗くすることで病気を予防できると確かめた研究ではありません。
結果|夜間の光と心不全・心房細動などの関連
英国の大規模健康調査「UK Biobank」を使った観察研究です。手首の機器で7日間の光を測定し、各人の活動が最も少ない5時間を「夜間」として、3ルクスを超える光を浴びた時間を調べました。夜勤の方は除かれています。
主な解析では、心血管疾患の既往がない約1.1万人について、測定から中央値3.1年後の心臓MRIを比較しました。光を浴びる時間が長い群では、左心室の壁が厚いなどの関連がありました。一方、血液を送り出す割合を示す「左室駆出率」には、統計学的に明らかな差はありませんでした。
さらに、調べる病気に応じた71,077〜73,286人を対象に、発症や心血管疾患による死亡を解析しました。その病気がすでにある方は各解析から除かれ、追跡期間の中央値は項目により7.9〜9.5年でした。
夜間の光を浴びる時間が長い群と、3ルクスを超える光が測定されなかった群との比較
| 調べた結果 | 相対的なリスク (95%信頼区間) |
|---|---|
| 心不全 | 1.29倍 (1.12〜1.49) |
| 心房細動 | 1.15倍 (1.04〜1.27) |
| 心筋梗塞 | 1.24倍 (1.07〜1.44) |
| 脳卒中 | 1.33倍 (1.11〜1.59) |
| 心血管疾患による死亡 | 1.26倍 (1.05〜1.52) |
※年齢・喫煙・高血圧などの違いを考慮したハザード比です。1.29倍は「29%の人が発症した」という意味ではありません。括弧内は推定の不確かさを示す範囲です。
表は副次的な解析で、各項目に統計学的な関連が認められました。ただし、光の測定は1週間に限られ、生活環境などの影響を完全には除けません。日本人にも同じ結果が当てはまるとは限りません。
当院からのメッセージ
今回の研究は、睡眠環境を振り返るきっかけになります。ただし、夜間の転倒を防ぐために必要な明かりまで消す必要はありません。息切れ・むくみ・動悸が気になる場合は、照明や睡眠の問題だけと考えず、ご相談ください。
足立区・谷在家の「心臓・脳・血管のしばはし内科」では、症状や病歴、生活の状況を伺い、血液検査や心電図、心エコーなどの必要性を一人ひとりに合わせて判断します。詳しくは、心不全・心臓弁膜症の診療をご覧ください。
参考文献
Dai J, Dai W, Heianza Y, Qi L. Nighttime light exposure and cardiac structure and function. European Heart Journal. 2026年9月9日オンライン公開.
