2026年9月23日

疑問|心房細動に血液をサラサラにする薬は必要?
「心房細動と診断され、血液をサラサラにする薬を勧められました。あまり症状がないのですが、飲む必要はあるのでしょうか?」
心房細動は、心臓の上の部屋である「心房」が細かく震える不整脈です。心臓の中に血のかたまり(血栓)ができ、それが脳の血管に詰まると脳梗塞を起こすことがあります。
この血栓をできにくくするのが抗凝固薬です。「血液をサラサラにする薬」と呼ばれますが、動悸を抑える薬とは目的が異なります。今回は、臨床医学分野で世界的に評価の高い医学誌「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に掲載されたSINGLE-AF研究を紹介します。
結論|脳梗塞と出血のリスクを踏まえて判断します
心房細動の抗凝固薬は、症状がなくても必要になることがあります。年齢や高血圧・糖尿病・心不全、脳梗塞の既往などから予防の必要性を評価し、出血のリスクも踏まえて判断します。
今回の研究では、脳卒中リスクが中程度の方でも、抗凝固薬によって、脳卒中・全身性塞栓症・大出血・心血管死をまとめた発生が減りました。治療を考えるうえで参考になる結果ですが、すべての方に同じ治療が必要という意味ではありません。
結果|心房細動の1,803人を調べた最新研究
韓国の18施設で行われた研究で、19歳以上の心房細動患者1,803人(平均60.4歳)が参加しました。対象は、年齢や持病による評価で脳卒中リスクが「中程度」とされた方です。ここでいう中程度は、動悸などの症状の強さを示すものではありません。
血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)を服用する方と、日常的には服用しない方に無作為に分け、2年間の結果を比較しました。
研究対象の基準は、CHA₂DS₂-VAScという評価方法で男性1点、女性2点です。抗凝固薬を日常的には使用しない群でも、不整脈の治療に伴う一時的な使用は認められ、一部の方は別の種類の血栓予防薬(抗血小板薬)を使用していました。
| 2年間で調べた結果 | 抗凝固薬を服用 902人 | 抗凝固薬の 継続服用なし 901人 |
|---|---|---|
| 主に調べた 複合結果※ | 0.5% 4人 | 1.5% 13人 |
| 脳卒中 (脳梗塞・脳出血) | 0.3% 3人 | 1.1% 10人 |
| 大出血 | 0.3% 3人 | 0.5% 4人 |
※脳卒中、全身性塞栓症(血栓が脳以外の血管に詰まること)、大出血、心血管疾患による死亡のいずれか。割合は論文に記載された24か月時点の累積発生率の推定値で、人数を単純に割った値とは異なります。
主に調べた複合結果には統計学的に有意な差があり、2年間の発生割合の差は約1ポイントでした(1.5%から0.5%)。ただし、これは脳梗塞だけの結果ではありません。脳卒中単独や大出血については、この研究だけで差があると断定できません。
補足|抗凝固薬の副作用と出血をどう考える?
抗凝固薬には、血栓をできにくくする一方で、出血しやすくなる面があります。今回、大出血は両群とも少数でしたが、もともと出血リスクの低い方が多く、「出血の心配はない」と言い切れる結果ではありません。
また、韓国で行われ、重い腎臓病などのある方は対象から除かれています。起きた出来事の数も少ないため、効果の大きさには不確実性が残ります。日本での治療は、国内のガイドラインも踏まえ、腎機能や併用薬などを確認して判断します。
当院からのメッセージ|心房細動の治療でお悩みの方へ
「症状がないから薬はいらない」と自己判断せず、脳梗塞予防の必要性を確認することが大切です。出血が心配な場合も、処方されている薬を自己判断で中断せず、まずはご相談ください。
足立区・谷在家の「心臓・脳・血管のしばはし内科」では、これまでの病歴や検査結果、現在のお薬、ご本人の不安や希望を踏まえ、治療の必要性を一緒に考えます。心房細動と診断された方、薬の効果や副作用が気になる方は、お薬手帳やこれまでの検査結果をお持ちください。
病気や検査については、不整脈の診療・検査、脳梗塞についてのページでもご案内しています。
参考文献
Kim D, Lee YS, Shim J, et al.; SINGLE-AF Investigators. Anticoagulation for Atrial Fibrillation with Intermediate Stroke Risk. N Engl J Med. Published online August 28, 2026. doi:10.1056/NEJMoa2607978
日本循環器学会・日本不整脈心電学会.2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療(2025年5月26日更新).
